『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第6号（2017年発行）より

“この本は、飲んでも太らないビールのようだ。愛を語りながらもドロドロしていない、淡白でありながらユーモラス、温かみがありながら嫌気がささない。そのような本は、飲んでも太らないビールと同じで、存在し得ないのではないかと思っていた。『いつか説明が必要な夜』を読むまでは。”（小説家チェ・ミンソク書評より）

女性シンガーソングライター、アンニョンハシンガヨンの初エッセイ集。プロジェクトアルバムＣＤ『短編集』と同時に発売された。このプロジェクトは春夏秋冬そしてまた巡って来る春を、音楽と文で表現するものである。
目的を持って文章を書くことが好きではない著者が、目的を持たず徒然なるままに書き留めた文を一冊に集めたものだ。繰り返される平凡な日常の中で普通の人が見落としてしまいがちな一瞬一瞬を独自の感性で切り取って、温かなまなざしを向ける。一行詩のような言葉遊びから一般的なエッセイまで様々な形態で自由に書かれており、目的なく書かれた文章もこうして集められると、春夏秋冬のようにうつろう人生模様をきちんと描き出し、ひとつの立派な作品となっているのだと感じさせる。“必ずしも芸術の形をとっていなくても、人生そのものが創作物で作品” という著者の言葉通りだ。
そして随所にちりばめられたアンニョンハシンガヨン自作曲の歌詞。まるで深夜にラジオから流れる音楽とトークを楽しんでいるような、そんな気分にもさせてくれるエッセイ集だ。