『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第6号（2017年発行）より

いじめ、自殺で汚された今の韓国の青少年の姿を「名探偵の息子」というこれまでになかった切り
口で表現した作品。推理で緊張感を持たせ、クモの巣のようにからまった人物の心理を詳細に描く。また、随所に探偵に関する知識も数多く散りばめられており、有名な探偵や推理小説の作品はもちろん、日本の人気推理漫画作品も登場する。著者は、身近にひとりぐらいはいそうな「名探偵の息子」を通じて、いじめや自殺などが横行する韓国社会の断面に触れながら、生きていくのが辛くても人生の主人公になるためには、ひとり一人が真実を追う探偵にならなければいけないという
メッセージを伝えている。

非常に重いテーマを扱ってはいるが、日本で人気の推理漫画作品が登場したり、ギワンと父ミョンダル、ギワンの親友モンキーとのぷっと吹きだしてしまうような掛け合いがあったりと、ウィッ
トにとんだ文章でテンポよく物語を展開しているため、子どもから大人まで読みやすい作品であ
る。青少年はもちろん、特に子を持つ親には今の学校社会の現状を知ってもらうためにぜひ読んでほしい作品である。2012 年に文化体育観光部の優秀教養図書、2013 年には幸せな朝の読書の青少年推薦図書にも選ばれている。