「新しい韓国文学シリーズ」第3作としてお届けするのは、現代韓国を代表する作家・具孝書(ク・ヒョソ)の、長崎を舞台にした絆と新しい共同体の物語「長崎パパ」。
「せっかく人間として生まれてきたのに、日本人とか朝鮮人とかだけで終わるってのは寂しいじゃない。それは、生まれながらに決まってしまうスタートラインにすぎないだけで、辿り着くべきゴールではないでしょう?」
それぞれが背負った悩みや痛みを分かち合い、支え合いながら、彼らなりの答えを求め続ける「ネクストドア」の人たち。そこに生まれる絆と新しい共同体の物語。現代韓国を代表する作家・具孝書(ク・ヒョソ)の傑作長編小説。
ためし読みはこちらから『長崎パパ』刊行記念イベントレポートはこちらから2012年4月21日:在日本韓国YMCA(水道橋)、22日:入間市文化創造アトリエアミーゴ(入間)
●韓国の「いま」がわかる 「新しい韓国の文学」シリーズ
韓国ドラマや韓国映画の流行で、韓国の人々の考え方やその生活のようすなどが日本でも広く知られるようになりました。
ドラマや映画で韓国に興味をもった皆さんに、次におすすめしたいもう一つのジャンルが、「韓国の文学」。映像で表現されるドラマや映画と違い、小説やエッセイなどの形でつづられる主人公の心情や現代韓国の時代背景などは、とても味わい深く、韓国・韓国人への理解をより一層深めます。同時に、異国でありながら現代日本と驚くほど似ている部分、よく似ているように見えてまったく異なる部分なども、小説を通して感じていただけると思います。
株式会社クオンでは、「新しい韓国の文学」というシリーズを立ち上げ、いま、韓国でよく読まれている小説の中から、文学的にも高い評価を得ている作品を厳選し、日本の読者に紹介していくプロジェクトを始めます。
小説・詩・エッセイなど、2000年代に入って注目を浴びている実力派の現代作家の作品を、定期的に紹介していく予定です。
ぜひ、韓国文学の豊饒な世界を通して、隣国・韓国の「いま」を感じ、味わってください。
●著者プロフィール : ク・ヒョソ(具孝書)
1957年韓国江華島生まれ。
1987年に中央日報の「新春文芸」に短編小説で当選し、作家活動を始める。
1994年に『栓抜きのない村』で韓国日報文学賞を、2005年『塩かます』で李孝石(イヒョソク)文学賞、2006年『明斗(シャーマン)』で黄順元(ファンスノン)文学賞、2007年には『かけ時計の痕(あと)』で韓戊淑(ハンムスク)文学賞を受賞し、同じく2007年に『調律―ピアノ月印千江之曲』で ホギュン文学賞を受賞するなど、数々の権威ある文学賞を受賞した。
『長崎パパ』では、2008年に韓国最大の文学賞である大山文学賞を受賞している。
作家デビュー以来、読者から愛され続けてきた現代韓国を代表する作家の一人。
堅実なテーマと面白みを兼ね備えた作品は、批評家・読者双方から高い評価を得ている。
●訳者プロフィール1 : 尹英淑(ユン・ヨンスク)
1953年韓国生まれ。韓国の東義大学校日本文学科卒業。
8年間の東京滞在後、帰国。新羅大学国際関係学科の日本語講師を勤めた。
2003年から埼玉県に在住。在日詩人ぱくきょんみと韓国の文貞姫、金龍澤、安度眩、金素月、鄭浩承の詩を共訳し『白い乳房黒い乳房』―地球をむすぶ72のラブ・メッセージ(2009年、ホーム社刊)に紹介する。共著に「現代快速日本語」全9巻。
●訳者プロフィール2 : YY翻訳会メンバー
■渡辺八太郎
1936年東京生まれ。出版社に勤務。退職後、公民館で韓国語の勉強を開始。
韓国語学習サークル「ハングル楽会」元代表。
■冨田嘉信
1940年生まれ。熊本県出身。定年後、韓国慶熙大学語学院留学。
公民館でハングル勉強会の講師を勤める。
■禹貞鉉
1960年韓国生まれ。1988年日本人と結婚。保育士。
現在は、小学生や公民館サークルの韓国語講師をしている。
■関谷敦子
1964年生まれ。商社勤務の後、英国に留学。のちに韓国語を「ハングル楽会」で学ぶ。
現在は、英/韓/日の映像翻訳を手がけている。
●【特別なあとがき】 この本はこうやって生まれました
「YY翻訳会」は、地域の公民館を拠点に韓国語を勉強してきた翻訳勉強会である。
その韓国語能力を生かし、日本人と韓国人の力を合わせれば、両国の文化交流に貢献できるのではと試みたのが文学作品の翻訳。その成果を試したく、韓国の大山(デサン)文化財団で韓国文学の世界化のために支援している翻訳支援金を申し込んでみたどころ、ありがたいことに私たちの翻訳が認められ支援金をいただくことになった。
翻訳支援金に大きく励まされた私たち日韓両国の五人のメンバーは、週一回、時にはそれ以上、公民館に集まり、韓国語と日本語が持つニュアンスを徹底的に話しあいながら翻訳をまとめた。ひとつの文章で長い討論になったり、文化や歴史の話に逸れたりもしたが、完成度の高い翻訳を、という目標に近づいていく過程そのものが楽しく、『長崎パパ』のお陰で充実した幸せな時間を送ることができた。
こうして日韓の五人の知恵を絞って仕上げた作品を「新しい韓国の文学」シリーズの一冊として快く出版を引き受けてくださった(株)クオンの金承福社長にまず感謝したい。
そして、翻訳支援金を申し込む段階から私たちを励ましてくださった日本大学の野口恵子先生、貴重な助言と身に余る信頼を寄せてくださった藤原一枝先生、この二方には何と感謝の言葉を述べていいか分からない。
また、推敲する間に、何度も稿に目を通してくださり、意見を寄せてくださった荒木美恵さんを始め、諸先輩や友人たち、度重なるスケジュール変更に嫌な顔もせず対応してくださった入間市扇町屋公民館の職員の方々に深くお礼を申し上げる。
他にも本当に数多くの方にお世話になったが、ここに無事、一冊の翻訳書として、みなさんの元にお届けできることを報告し、感謝の言葉とさせていただきたい。